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“チクチク”するのはどれですか?

手元に幼児用のペーパー教材があります。イラストを見て「どっち?」や「どれ?」を答えさせるもので、古くからある優良教材です。あるページは、無数の帽子のイラストの中央に一本の線がひかれ「おおいのはどっち?」と問い、線の左右の帽子を数えさせます。

また「ようすを表すことば」のページには、6種類の動物(ヒヨコ、はりねずみ、ひつじ、いぬ、カメ、ドジョウ)の絵が描かれていて、「“チクチク”するのはどれですか?」とたずねます。出題者は「はりねずみ!」と答えて欲しいのでしょうか。でも変な感じです。子どもの手はやわらかくて敏感で、あらゆるものが“チクチク”するでしょう。私は大人げなく「子どもはぜんぶチクチクするよ。」とテキストに答えてしまいました。

幼児の手には、世界は“チクチク”だらけです。ヒヨコの足は“チクチク”、ドジョウのひげだって“チクチク”、ひつじの毛は実際に触れると相当“チクチク”です。機嫌が悪いひつじは突然体当たりしたりします。ですから、ひつじって“チクチク”を超えて“いたい!”のです。そしてはりねずみは“チクチク”するでしょうが、多くの子どもは触れたことがないでしょう。

実体のない抽象的なイラストから物事を考えられる年齢は、10歳前後と言われます。ですからペーパー教材に正しく答える幼児は、何か無理をして大人化しているのだと思います。幼児は大人と違います。見て、触れて、嗅いで、漠然とモノに触れて面白がった末に、すとんと腑に落ちて一つ知ります。理解とまでいかない感覚のあつまりだと思いますが、「こういうの、“おはな”っていうの?」と後から知ります。他の誰のでもない“わたしだけ”の豊かな感覚体験です。

先日Hちゃんがめずらしく教室の開始時間に間に合いませんでした。道に椿の花がたくさん落ちていたから拾ってひろって、百メートルの距離を30分かけて歩いたそうです。Hちゃんは一つ私に見せてくれて「あかい…はな、」と言ってやわらかい手でそっとバッグにしまいました。この30分で花びらの散りやすさを知った、やさしい手つきでした。コロナ禍ではありますが、私たちは子どもと目線やスピードを合わせて過ごすことを、今まで以上に心掛けていきたいと思います。

※“ちくちく”のことを考えていると、先日ラジオで武田砂鉄さんが「ふわふわ言葉」と「ちくちく言葉」の話をしていました。『言われて嫌な気持ちになったり悲しい気持ちになることばを「ちくちくことば」、 その反対に言われて嬉しくなったり,元気になったりする言葉を「ふわふわことば」』と小学校では教えます。でもさっきのペーパーの回答のように、ことばに線を引いて、教室で話される言葉の良し悪しをジャッジするなんて、やっぱり変だと感じます。話しことばに触れて、自分の感覚ですとんと腑に落ちる事柄は「分かる。」です、腑に落ちないことは「なんで?」なのだと思います。一人一人の「なんで?」を埋めていくことなしに、共感も思いやりも育ちませんから、教室の言葉を「ふわふわ言葉」と「ちくちく言葉」に分けてそれで済みではないと思いました。このことは、改めて考えてみたいと思います。