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「3さいから分かってたんだ・・・。」

 しとしと雨が降る朝、Sくんが静かに話してくれました。「あのね・・・。じょうずにかきたいの。」「どういうこと?」「はみ出したくないんだ。」

 Sくんはピンク色の鉄枠を色鉛筆でなぞってから、図形の重なる部分を塗っていました。彼は4歳になったばかりです。話すことばが増え、自分の気持ちを豊かに伝えてくれるようになりました。

 「3さいからね、分かってたんだ。(鉛筆で塗るとき)はみ出してるのは。でも、どうしてもはみ出しちゃうんだよ。つよく書いて紙が破けると、もう…やりたくなくなるんだ。」何という表現でしょう。大人はすっかり忘れてしまった、痛いようなかなしさ。それを4歳のSくんは、大人に教えてくれたのでした。

 子どもははじめ、道具を持つことが嬉しくて、持つだけできらきらと輝く瞳になります。でも最初から上手に使うのは難しいので、大人が「見ててね。」と使い方を見せます。でも、多くの子どもは、見るのもそこそこに、どんどん笑顔で手を動かします。紙や糸を切りすぎても、動作がうれしいのでしょう。それがある時、「あれ、何か違う。」と気づきます。何が違うのか言えない。けれど、何か「いや。」と思うのです。

Sくんの気持ちを大人が分析すると、「僕の絵には、きちんと描けている部分と、きちんと描けていない部分があって、きちんと描けていない部分は『はみ出している』部分だな。それが嫌で悲しくて。」とSくんは教えてくれたのです。

私ははみ出さないように、その日はS君とずっと塗り絵をしました。鉛筆を動かしながら、「線を見て。」 と何度も言いました。線は鉛筆をストップさせるところ、ストップしさえすればはみ出すことはありません。Sくんは、以前よりはみ出さないで塗ることができました。

このあとから、Sくんの「きちんとしたい気持ち」は高まり、バッグの中を整理したり、はさみで線の上を切ったり、「きちんと」の基準を持つようになりました。誰に決められたものでもない、「自分で決めた基準」を持ち始めたSくんは、自分らしいスタイルですることを選び、人とかかわっています。

 この話を、ご家族にすると「たくさん塗り絵に付き合うようになりました。忙しいけど、楽しいです。」とお父さんが話してくださいました。Sくんはいま、みんなに応援される喜びもあいまって、初めて鉛筆を持った時と同じ、きらきらの瞳で描いています。

※Sくんは、この後完璧な塗り絵をするようになり、ウルトラマンの絵を大人顔負けに描き、「スペシウムこうせん」と得意技も記入するようになりました。教室のほとんどの本を、友達に読み聞かせてくれるようになりました。塗り絵ではみ出すことがイヤ、という状況からたった1年間での変化です。